里アンナは1979年に奄美大島本島に生まれる。
3才の頃から祖父に島唄を習い始めた。祝い事があるたびに呼ばれ人前で唄ったという。
里アンナの生まれ育った笠利(かさん)は大島本島の北に位置し、平たんな地形であり、海は遠浅で、波は静かである。一方南は切り立った山がそびえる山岳地帯である。そういった地形の変化から唱法も異なる。ゆったりとした笠利(かさん)節とテンポが早く激しい東(ひぎゃ)節である。(元ちとせは東節)今回のアルバムでは裏声を駆使しつつも、ゆったりとしたおおらかさも兼ね備え、里アンナの特長を最大限に生かしている。
高校までを奄美で送った里アンナ、その背景には奄美の静かで美しい海がある。
アルバムでは4曲詞を書いているが、「月の足跡」はそんな奄美への郷愁、「ムーンビーチ」では「すきとおる浜辺」を舞台にした上質のラブ・サマー・ソングになっている。
「恋し恋しや」「あなたしかいなくて」は別れてもいつまでも忘れられない想い、好きな人を一途に想う女性の素直な気持ちを表現しているが、里アンナの裏声が哀切感をより増幅させ純愛感をも漂わせる。
このアルバムで1曲唄われている奄美島唄「俊良主節」(しゅんじょしゅぶし)は昔から宴会の席で唄われるポピュラーな遊び唄である。
元唄は妻を亡くした素封家(お金持ち)を慰める唄だが、ここで唄われているのは、2月3月に咲く百合の花の美しさは愛しい親兄弟よりも見たいものであるといった意味で、元唄から様々に変化する島唄の特徴を表している。
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