枯山水はいっさい水を用いずに石や砂で池や水の流れを表現する日本の庭園様式のひとつです。初期は池や川がない場所に造園するための地形を利用した写実的な手法でした。禅宗の伝来で、その「本来無一物」「足るを知る」などシンプルな思想に影響を受けた「わび・さび」の心、また従来の庭園よりはるかに狭い寺院内に作るなどの物理的制限も加わり、さらに進化をとげました。
無駄を取り去り、考え抜かれて配置された意味ある石々、掃き清められた白砂、余白のような空間というとても抽象的で精神性が高い庭園になりました。豊かな自然と四季折々の鮮やかな変化に恵まれた日本でこそ生まれた、幽玄の庭園です。
仏教では写経・写仏、静座して精神を集中させる座禅や万物の根源である梵字の「阿」の字を見つめる「阿字観」という瞑想法など多様な修行法がありますが、枯山水の庭園もまたその意味を読み解くべく投げかけられた問いのような存在です。研ぎ澄まされた美しい庭を眺めると、大河やせせらぎ、大海原に浮かぶ島、雲海につき出た山の頂、また無限の宇宙も見えるかもしれません。
静寂の庭園から何を感じるでしょう。このアルバムの音楽は己の心のありようで変わる庭園の様々な表情を選んで集めました。浮かびくる自然の摂理、そして日本の「わび・さび」の文化をお楽しみください。
野崎牧子