かつて日本には武士(もののふ)が居ました。そして、ひととして当たり前に持ち得る深い慈愛や情愛とともに、自らを律し、苦難にも耐え忍ぶ、美しい武士道が在りました。
大切な何かを守るためとはいえ、刀を携え、身分に上下のある古き時代をそのまま賛美することは出来ません。しかし、そこにあった人々の実直で誠意ある生き方こそ、日々変遷する世界にあって、日本人である私たちが指針とすべき精神ではないでしょうか。
本アルバムでは、その武士(もののふ)の象徴として、日本古来の尺八を選びました。尺八は、その音色の色彩の豊かさは勿論、構造自体も繊細で複雑であり、音を出すという行為が、祈りにも似た極めてプリミティブな楽器であることを再認識しました。
伝統芸能は、その時代その時代に於いては、継承を重んじると同時に、新たな刺激を求めたクリエイティブな挑戦の積み重ねに成り立ってきたと思います。
このアルバムが、その一役を担えたら幸いです。
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