二胡の無限の可能性を開花させた一枚
遥か昔、人類は神への捧げものとして、音楽や舞踏を創りだしました。弓を使って弾くという楽器自体も、いにしえの人々が自然のものを駆使して擦弦楽器の原点をあみ出したに違いありません。他民族の文化が中国へと伝わってきた唐の時代から、約1000年の歴史を持つ民族楽器、二胡。たった二つの弦から生まれる音色は、不思議なほど広い世界を持ち、せつなく、優しく響きます。ジャー・パンファンは昨今の「二胡ブーム」の中にあって、最も卓越した演奏テクニックを持つと言われる二胡奏者。中国で過ごした幼少時代から二胡を奏で続けた歴史の重みが、彼の奏でる音色には表れています。今回は、城之内ミサ、京田誠一、恩田直幸、プロデューサーの吉岡一政が、ジャー・パンファンのために作曲。こうした素晴しい作曲家たちの作品が集結し、中国の伝統音楽から西洋楽器を思わせるサウンドまで、二胡という楽器の無限の可能性を開花させた珠玉の一枚となりました。
オープニング・ナンバーは、北京で民族音楽の発展に貢献した教育者であり、歴史に残る二胡の作曲家でもある劉天華の作品を京田誠一がダイナミックにアレンジした「空山鳥語」。はじまりから賈鵬芳の二胡奏法の素晴しさに圧倒されます。賈鵬芳本人が作曲したという貴重な作品「明日へ」も収録。この曲では、可憐な花の香りや清らかな風のような優しい二胡の音色が、新しく訪れる時への希望を感じさせてくれます。城之内ミサ作曲の「東方花園」は、アラビア音階をちりばめたビオラと二胡という東西擦弦楽器の共演により、新しい二胡の世界を展開しています。小春日和の街を自転車で走っているような、ウキウキとしたサウンドが楽しめる「陽春の径」は、自身のアルバムでも賈鵬芳と共演している恩田直幸の作品です。プロデューサー吉岡一政の作品「旅愁」では、旅先のせつない出逢いや別れを優しい二胡の音色で情感豊かに表現。こうした二胡が奏でる様々な情景は、聴く人を遠い旅へと誘うのです。
音楽家 城之内ミサはジャー・パンファンの奏でる二胡の音色を、こう表現しています。「人柄さえも音色に表れているかのような、限りなく優しく美しい音の波。時にはアグレッシブに、時には情熱的に奏でられる二胡の音色。彼の大きな手から生まれる音符の羅列さえも、『癒し』になるのです」
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