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CHCB-10048 (CD)

浪漫 ROMAN / ジャー・パンファン

01. 武蔵(メインテーマ)[NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」より]
02. ニューシネマパラダイス / Nuovo Cinema Paradiso [映画「ニューシネマパラダイス」より]
03. 愛のテーマ / Tema D' Amore [映画「ニューシネマパラダイス」より]
04. デボラのテーマ / Deborah's Theme [映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」より]
05. ロマンス [NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」より]
06. 愛を奏でて / Playing Love [映画「海の上のピアニスト」より]
07. トトとアルフレード / Toto E Alfredo [映画「ニューシネマパラダイス」より]
08. マレーナ / Malena [映画「マレーナ」より]
09. 哀愁のテーマ [NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」より]
10. 武蔵(メインテーマ)リプライズ [NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」より]


ヴァイオリンよりもまろやかに。少しヴィヴゥラートがかかった二胡の主旋律が流れ出す。とたんに、そこに。少し大きめサイズの帽子を目深にかぶったトトの眩しそうな笑顔。その少年を抱きかかえるように自転車の前に乗せて走るアルフレード叔父さんの大きな躯体。
鮮やかに『ニューシネマ・パラダイス』の一場面が甦る。
映像にマジックをかける稀有なる天才、エンニオ・モリコーネの珠玉の名曲の数々が二胡の名手、ジャー・パンファンの音色によって一枚のアルバムとなって完成した。
はてさて。映画音楽というのは、ある意味、制約のある音楽である。
印象を聞き手がおもいおもいに映像化できるわけではない。耳で感じるときにはすでに目でシーンごとの映像をシンクロニシティにキャッチしているからである。 主人公の心象風景。情熱。なみだ。笑い。せつなさ。
そしてときに。広大な自然の風景自体が、音楽とともにからみあい心ごと映画のただなかへといざなってくれることもある。 そうした一音一音を創りだすモリコーネ。その楽譜から、音を紡ぎだすジャー・パンファン。ふたりのコラボレートは、銀幕の世界へのタイムトリップにとことんわたしたちを酔わしてくれる。
オープニングには、モリコーネがNHK大河ドラマ「武蔵」のために特別に書き下ろしたメインテーマ。前述の「ニューシネマ・パラダイス」はじめ、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「海の上のピアニスト」「マレーナ」といずれも日本の映画ファンにはなじみの深い大作ばかり。だからこそ。アーティストは、すでに映像が先行している各テーマを奏でるのに、再現を越えた強いソウルを重ねなければならない。
ジャー・パンファンは、見事にそれを音色に滲ます。
オネスティ・・・誠実さ。映画の感動が、彼のソウルを通すことでさらに深みをまし、真摯に正直にあたたかい抱擁を持って音に託される。
目を閉じ、弦を操る瞬間。彼の心もモリコーネの世界にひきこまれ振幅し、そのゆらぎが映像以上の圧倒的説得力をもって、差しだされる。
彼の音色は、聞き手の記憶の映写機をやさしく回し始め・・・。わたしたちは、そのたまゆらな潤いにただただうっとりと身をまかせるのである。

上野まゆこ