日本の胡弓、中国の二胡。どちらも同じ楽器と思われがちですが、起源的には別の系統ではないかと考えられています。
日本の胡弓は三味線に似た箱型の大きな胴体を持っており、これに比べ二胡は筒形で小さめの胴体を持っています。
二胡は二本の弦の間に弓を通して弾きます。このアルバムの主役“二胡”は中国伝統器の一つですが、いわゆる弦をこすって音を出す楽器(リュ−ト属)は、モンゴルの馬頭琴,朝鮮半島のヘグムを始め、アジアだけでも数多くあります。ヨ−ロッパではバイオリンがそうした楽器の代表格ではないでしょうか。
さて、楽器の演奏はもともと歌を模倣することから始まったといわれています。もしそうだとすれば、二胡は大陸的なメロディ−を大陸的な音色で表現するのに、全くぴったりの楽器と言えます。低音から高音まで伸びやかに広がる音色は、大陸の赤味がかった大きな空と緑の大地や、豊かな自然に包まれて穏やかに生きる人々の息づかいまでもイメ−ジさせます。
このアルバムに収録されている曲の中で、純粋な中国古曲は6曲目の「YUEYA WUGENG」と9曲目の「YUEYE」のみで、これらの曲以外はこのアルバムのためのオリジナル作品です。しかも全曲西洋和声やピアノ,ギタ−,ストリングスなどの西洋楽器をふんだんに取り入れたアレンジを施しているにもかかわらず、二胡の奏でるサウンドはあくまでも東洋的やさしさと物悲しさを保ち、大陸の牧歌的雄大さを表現しています。
このアルバムのもう一方の主役、Jia Peng-Fang氏は、プロフィ−ルにもあるように中国、いやアジアを代表する二胡奏者ですが、彼の優しく穏やかな人柄が演奏に反映され、より一層私たちをゆったりとした気持ちにさせてくれるのかも知れません。又、アルバム全曲のアレンジと作曲6曲を担当している京田誠一氏も、自然な形で二胡という楽器をとらえ、ナチュラルなメロディ−・メイクとアレンジを行っています。これにより、普段こうした楽器にあまり接する機会のない私達にも違和感なく入り込める作品ととなっています。
「RIVER/河」というタイトルの様に、小舟に乗って黄河を下り、岸辺の風景を楽しむような気持ちで聴いてみてはいかがでしょうか。