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CHCB-10024

Okinawa / 具志堅 京子

01. AGARIJOU - 東門
02. KAGIYU NUKUCHI - 影ゆ残ち
03. NATSUKASHIKI FURUSATO - 懐かしき故郷
04. NANYOU HAMACHIDORI - 南洋浜千鳥
05. TARAMA SHONGANE - 多良間ションガネー
06. NISHINJOU BUSHI - 西武門節
07. YANAGIJOUWA - 柳情話
08. ASHIBI SHONKANE - 遊びションカネー
09. ASAPANA - 朝花
10. ICHIN AYAGU - 意見あやぐ
11. KUNJYAN SABAKUI - 国頭サバクイ
12. UMENO KAORI - 梅の香り


具志堅京子「沖縄」について

具志堅京子は損をしてきた。あのかん高い声質に。昨今の沖縄(本島)の島唄は囁き声の情歌の傾向が強い中、具志堅京子はこれでもかと言わんばかりにキンキンと攻めたてる。ややもすると煩がられるのだが、時間と出会いは初々しくも艶やかな唄へと見事な構築を遂げさせた。山川徳一、照屋寛徳、大城美佐子、安里勇らと出会い、師事してきたという事は戦後沖縄島唄の黄金期を築いた巨人、喜納昌永、嘉手苅林昌、知名定繁、山里勇吉の言うなれば孫弟子に当たるわけで、芸暦30年にしてのアルバムデビューはやはり随分遠回りをしてきたと言ってよい。

今回の選曲も新曲一曲を除いて、ラジオや民謡クラブで普通に聞ける所謂スタンダードナンバーであるが、特定の歌手による特定の評価を受けてきた代表曲をあえて歌っている。例えば「懐かしき故郷」は現代沖縄音楽の元祖ともいうべき普久原朝喜のオリジナルEP(マルフクFM-211)が有る。「柳情話」は金城実のデビュー曲であり、代表曲の一つである。「朝花」「東門」等もオリジナルに果敢に挑んでいるし、「西武門節」や「遊びションカネー」のポピュラーなスタンダードは力を抜いて流して歌っている。どれも具志堅京子の特徴がよく表れている。しかし、京子節というか京子ワールドは未だ完成されていない。それは渡海離(とけひじゃみ)、即ち海外(沖縄の外という意味)へ出るべく使命を遂行して初めて構築されるものであるから。それこそが具志堅京子の「沖縄」だ。

小浜 司


初めて沖縄の音楽に触れた人の多くに自ずと「哀感」を痛烈に感じた者がいたのではないかと思う。 通常我々が沖縄に対して抱いているイメージは燦燦と輝く太陽とエメラルド色を湛えた透明感溢れる海、 このふたつの光景に支配されているに違いない。 ならばどうして楽園の筈の沖縄の島唄に悲哀をも感じさせるものが多いのだろう? この問いへの答えはやがて90歳になる僕の祖母と今まで交わした会話の中に散りばめられていた気がしてならないのである。

沖縄本島中部の農村地帯で育った祖母は幼少の頃の生活風景を回顧する時に必ずと言って良いくらい「あの時の沖縄は本当に貧乏だった」と嘆かんばかりに僕に言ったものだ。 薩摩による搾取、不作がもたらした飢饉、人身売買などの話を訊くと、 片時の安らぎを与えてくれた島唄は道理で悲哀と慰安に満ちたものばかりだったと納得が行くのだ。 我々がつい描きたくなってしまう楽園のイメージとは裏腹な生活背景が実は沖縄民謡の土台だったと、 高齢者の話を訊けばこう思わずにはいられないであろう。

然し同じ哀感でも灼熱の太陽の下に育まれただけあって、 沖縄の民謡には達観に似た逞しい前向きな姿勢が多分に伺う事も出来る。 鬱憤を炸裂させてくれる早弾きのカチャ―シーがその好例のひとつ。 そして琉球古典音楽に触れて痛感したのは恋をテーマにした作品が実に多い。 生活苦や理不尽な事から逃れるには恋愛が絶好の捌け口だったのだなと島の人達が抱いていた浪漫への憧憬が如何に強烈だったのか古典や民謡の数多くの作品が教えてくれる。

島の先人達が癒されたがごとく、このCDを聴かれた方も現世を暫し忘れる事が出来るよう切に望むところだ。

ジェームス天願