この世には、さまざまな楽器があります。
そのほとんどが、西アジアや中央アジアにルーツを持つと言われています。
ある本によれば、シルクロード渡りの楽器のほとんどが西アジアはペルシアにルーツを持つと言っても過言ではないとあります。琵琶のルーツを逆に辿ると、ピパ(中国琵琶)、そしてペルシアのウード(バルバット)に行き着くそうです。又、サントゥールは、イランの楽器でバグダッドのダルシマーと兄弟のような楽器。これが改良され東進すると中国の揚琴(ヤンチン)になり、又、改良されながら西進するとピアノになってしまうのです。中国の笛もエジプトのナイ(葦の縦笛)と兄弟ですし、アラブの笛バラバーンも、アルメニアやウィグルなどにあるダブルリードの楽器で、日本の篳篥(ひちりき)のルーツとなったものです。
どの楽器も、ルーツを辿ってゆくと、そこには改良を重ね、進化したあるいは国境を越え形を変えた楽器達の静かな息使いが聴こえてきます。
「形あるものは、やがて消えてゆく」
それにもかかわらず、今もなお残って素晴しい音色を現代に届けてくれる楽器達。
そんな愛しい楽器達へ、慈しみをこめた音楽を創りたいと思い、又々地球儀を回してみました。
すると目の前に、乾いた大地や砂漠をラクダに揺られて行く孤独な旅人、アラビア海の西風、中央アジアの草原や青島の海のさざ波・・・そんなたおやかで壮大な、あるいは神秘的な景色が見えてきました。
“華 〜Asian Blossoms”では、東から西へ。
“華?? 〜road to OASIS”では、西から東へと、人の哀しみや優しさ、せつなさ、果てなき夢、そして神秘性や情熱を持った心の中の旅人がいる。人生も旅だといいます。さまざまな出逢いや別れの中で、人の痛みや真の優しさを知ります。つらいことのほうが多いとも言いますが、出来事の全てを受け入れながら歩んでいく人生の中で、ふと立ち止まった時、心のオアシスが誰の中にもあることに気付く・・・。遠い先のことかも知れないけれど、光は必ず射してくる。明けぬ夜はないのだ。そんなことを考えながら作曲していました。“華〜Asian Blossoms”同様、リーフォア・アンサンブル(二胡、中国琵琶、揚琴、古箏)をメインに、ダルシマー、サントゥール、トルコの楽器のSAZ(サズ)、中国笛、手作りのエジプトのナイ、アラブの笛バラバーン、中国の管子(カンズー)、日本の篠笛、ハープ、オーボエ、ホルンやストリングス、ピアノ、エレキアコースティック・ギター、シンセサイザー、さまざまな楽器、プレーヤーに参加して頂きました。
「形あるものは、いつかは消えゆく」・・・しかし、人の心、旅人の心、人の魂は永遠だと思います。
皆さんは、どんな風景や感情を持ってこのアルバムを聴いて下さるでしょうか。
「言霊(ことだま)」という言葉があります。
このアルバムには、言霊ならぬ、「音霊(おとだま)」がいると思っています。
このアルバムに参加して下さったリーフォア・アンサンブルの皆さんはじめ、全てのプレーヤー、スタッフに心から感謝します。
ありがとう。