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CHCB-10036 (CD)


都 Ancient City II-Piano Collection
都 ANCIENT CITY II - PIANO COLLECTION

01. Floating Dream / 山下力哉
02. 想い出 Recollection / 渡辺雅二
03. 都 Miyako / 城之内ミサ
04. 秋雨 Autumn Rain / 恩田直幸
05. アクア Aqua / 経田康子
06. 華 Flower / 山下力哉
07. 春景色 Scenes Of Spring / 渡辺雅二
08. 桜 Sakura / 経田康子
09. 雪舞い Snow Dance / 城之内ミサ
10. 夕焼け Evening Glow / 経田康子
11. 京の小道 Streets Of Kyoto / 城之内ミサ
12. Melody Of The Wind / 山下力哉
13. 夕顔 Moon Flower / 恩田直幸
14. 蜃気楼 Mirage / 渡辺雅二


はんなりと。・・・そんな京コトバがある。
この語感をあえて説明するなら、華やかな、あるいはたおやかな、という意味合いになるのだろうか。花の都巴里、ルネサンスの都フローレンス(フィレンツェ)、世界中に沢山の都は数あれど、日本人の私たちにすれば、やはりいにしえの都、京都に思いを馳せずにはいられない。うす紅の桜に染まりし春のいざないから、光を拡散する新緑の蒼い息吹き、真っ赤に木々を染めにし紅葉のころを経て、都は凛とした寒さと白雪の静けさを纏いつつ、また巡り来る季節を待つことになる。そんな移ろいゆく四季の華やぎを5人のアーティストが丹精こめてピアノの一音、一音に織りこみ、はんなりとした一枚の西陣織に仕立ててくれた。それがこのアルバム「都」である。

はらはらと舞う桜吹雪。山の稜線に色を溶かす夕暮れ時の朱色の鮮やかさ。細長い路地や町屋をするりと駆け抜けるのは一陣の風の匂い。苔むす翠の絨毯に一葉のもみじが色を添えれば、せせら流れる鴨川の水面には、そぞろ歩く舞妓さんの“だらりの帯”の極彩色が賑やかに舞い踊ることもあるだろう。が、ピアノの音から喚起させられるのは、千変万化する古都の美しい風景だけではない。 都を成り立たせる軸は、ひとをおいて他にはない。だからこそ都には華があり、そして影がある。 喜びもあれば、哀しみもある。実があれば、虚もはばかる。相反するものに、ひとはどうしようもなく魅了され翻弄されるものだ。悠久の時の流れの中で、生まれては絶え、そして再生されてきたのは、どんなに時を経ようと決して変わることないひとのこころ。その大いなる揺れ幅をときに優しく、ときに厳しく憂いながらも、都はすべてを包みこみ見守りつづけてきた。それが、時の重さを咀嚼し、受け入れつづけざるを得ない都の宿命でもあるからだ。

哀しみに打ちひしがれようと、苦しみに痛みを感じようと、そしてもちろん喜びに気分が高揚するときでさえ。 このアルバムのピアノの音は、鴨の流れのように、その時どきの貴方の真情に静かに寄り添ってくれるだろう。 ただ静かに。黙して語らず。はんなりとした中に、ひとのこころの熱い思いだけを脈打たせながら。 うつろうこころの動きのままに、ただ音を感じさせてくれるだろう。
アルバム「都」には・・・そんな懐の大きさがある。

上野まゆこ