私の初めてのピアノ・ソロのアルバムです。思えば、初めて手にした楽器はピアノでした。メソード・ローズの教則本を真似て、小さい頃からピアノ曲を作っては遊んでいたのを思い出します。その頃は(今でもかもしれませんが)、ピアノで、絵日記ならぬ「音日記」をつけていました。つまり、その時の気持ちや情景を、言葉にするのではなく音楽にして、言葉の変りに音符を綴っていたのです。
きっと、そんな積み重ねが、今の私の仕事の一部でもある、劇伴の仕事に役立っているのかもしれません。
このアルバムでは、自身のアルバム「華」、「華II」、「紅」、そして様々なピアニストの方達と共に参加したアルバム「雪」、「都」から、私のピアノをセレクトして頂き、その中の2曲は、パシフィックムーンのプロデューサーの吉岡一政氏の曲を演奏させていただきました。
自然の、あるいは季節のうつろいに畏敬の念を感じながら作曲し、演奏した作品ばかりです。ピアノの音色で、それぞれの美しい情景を伝えたいと、心を込めて奏でました。ショパンは「ピアノの詩人」と言われていましたが、私は「ピアノのかたりべ」と自称してしまいたくなりました。(笑)「自称」ほど、怪しいものはないんですが・・・。偉大なショパンに失礼ですよね。
それぞれの情景や私の小さな思いが、聴いてくださる方の思いや感情、イマジネーションにほんの少しでもクロスする瞬間があることを、祈るような気持ちで、今、このライナーノーツを書いています。
穏やかで静かな余韻が残ってくだされば、もう、それだけで幸せです。