ニュー・エイジ・ミュージック、とかヒーリング・ミュージックとかいった音楽がジャンルとして定着するようになったのはついこの2、3年だと思うが、今やレコード店でも大きな面積を占有するようになってきた。それだけ世の中が殺伐としているということなんだろう。
僕は個人的にはあまりこの言葉は好きではない。もともと音楽をジャンル分けすることがナンセンスだということも有るが、それによって買う人が最初からイメージを固定してしまうことが嫌なのだ。どんな音楽でも聴いた時のちょっとした驚きが必要だと思う、何かスーッと流れていくだけなら波の音や鳥の声で充分。
このアルバムは色んな驚きと発見がちりばめられている。二胡のたゆたうような響きの中に身をまかせているうちに、ふと気が付くと素敵なハーモニーがちょっと顔を出してそのまま又違う世界に運ばれていく自分を発見したりする。リズムもドラムがまったく無いバラード系から気持ちの良いループまで、バラエティーに富んでいる。そこらへんに転がっているヒーリング・ミュージックとは一線を画している、同じにしてくれるなと言いたい。
このセンス溢れるCDの中心に心地よく収まっているジャーさん。僕との付き合いはもう長い。確か音楽畑#6のレコーディングに参加してくれたのが最初の出会いだから、もう11年になる。まだ日本語が殆ど喋れなかったジャーさんが出した音に一目で、いや一聴きでほれ込んでしまった。その時に生まれた「風の子守歌」という曲は音楽畑コンサートの大事なレパートリーになっている。以来ジャーさんとどのくらいコンサートをやったか数え切れない。又、中国を含めて外国にも何回も演奏旅行に行ったが、何処に行っても一級の評価を得て来た。音色の透明感、優雅なヴィブラート、卓越した技術、そして何よりも彼の誰にでも好かれる性格が今のジャーさんを形成している。殆ど欠点のないジャーさんだが、一度僕の家の近所で酒を飲んでいて、楽器を忘れたまま帰ろうとしたことが有った。カミさんが、「ジャーさん、何か忘れてない?」と何回も聞いているのに、「いえ、大丈夫です」と言いながらそのまま帰ってしまったことが有った。勿論すぐに慌てて戻ってきたことは言うまでも無い。今、世界中が東洋音楽に目を向けているこの時に、このCDが大きく世界に羽ばたくことを期待する。