彩(COLOR)によせて
草叢に寝転び見上げる青空。ゆっくりと流れる雲。頬をなでるさわやかな微風。おだやかな日差し。ゆったりとした時の流れ。存在するすべてのものに感謝する瞬間。頭の中が空になり、目と耳と匂いと皮膚だけの存在になる自分。飽きない退屈・・・。スピ−カ−から流れる筝の調べに身をゆだねることさえすれば、そこはあなただけの時間、あなただけの世界となります。
筝は、五世紀中期以後、日本に伝来した絃楽器のひとつとして、中国からやって来ました。
最も弥生時代の遺跡からは木製の筝が出土し、古墳時代になると筝を弾く姿の埴輪がいくつもみつかっています。
中世になると、宮中で演奏される雅楽等の合奏楽器として使用されると同時に、ソロ楽器としても進化発展し、広く一般に浸透していきました。いずれにしても、それから一千年以上の時を越え、筝は日本を代表する弦楽器のひとつとなっています。日本の楽器の音色には、自然の音色が生きているといわれます。張りの違う25本の糸には、さわやかな春の風が生きづいているかもしれません。
一般的に筝といえば十三絃ですが、このアルバムで演奏されている筝は二十五絃です。高音から低音まで、音域が広い為、時にはハ−プのように聞こえるかもしれません。又、調律も西洋音階を基になされている曲もあり、コ−ド感も耳に馴染みやすいかもしれません。弾いては消える二十五本の糸による音の組み合わせが、都会の喧噪を忘れさせ、リラックスした時間をあなたにもたらしてくれるでしょう。