雪の朝、目覚めると静寂が部屋を包んでいます。積もった雪が音を吸収するのでしょうか。そんな時、私には「静寂の中の音」が聴こえます。「しん」とした音というのでしょうか。静けさの音というのが、存在しているような気がします。
リーフォア・アンサンブルのメンバーとして、私のアルバムやコンサートでいつも素晴らしい演奏を聞かせてくださるジャン・シャオチン。彼女の音から、いつも「自然の移ろい」を感じていました。その季節ごとに、様々な表情を持つ自然の息づかい。古箏という楽器の響きを通して体現する彼女の音色からは、限りない世界が広がります。聞き手の想像力を、心地よく刺激してくれるのです。
作曲している時、彼女の確かな奏法を思い浮かべながら、「清流」や「月」という、静かな気配を曲にしたいと思いました。あるいは、晴れ渡った冬の、哀しいほどの青空だったり。
ジャン・シャオチンは、そういうモチーフを音として表現出来るアーティストだからです。彼女の美しさは、そのまま彼女の音色です。凛とした中の、優しさ、たおやかさ。シャオチンの音色は、音ひとつひとつの余韻さえ、表情があります。どうぞ、彼女の呼吸が皆さんにも届きますように。「静寂の中の音」に耳を澄ませてみてください。
城之内ミサ