このアルバムは、ピアノに魅せられた5人の作曲家・ピアニストが一つのテ−マのもと11の作品を提供しています。
そのテ−マとはアルバムタイトルでもある「ANCIENT CITY(いにしえの都)」です。
日本でいにしえの都と言えば京都が想い浮かびます。首都が東京に移るまでの約1000年の間日本の帝都として
文化の中心となってきました。全国の国宝の約20%、重要文化財の約15%が京都に集中していることでも分かるように、
平安京以来京都は創造と伝統の都でした。音楽文化においても、中国から伝来したと思われる五音音階を基本
とし、宮中音楽が発展し、それが歴史の中で日本風にアレンジされ、日本音階が形成されました。
日本音階は数種類ありますが、代表的なものはいわゆるペンタトニックと呼ばれる音階で“ド・レ・ミ・ソ・ラ”の五音で構成されています。この音階は伝統的な民謡や童歌などによく見られますが、ポップスなどにも見ることができます。例えば今も多くのア−ティストがカヴァ−している「上を向いて歩こう(SUKIYAKI)」などはこのペンタトニックを上手に取り入れメロディ−を構成しています。この曲が日本でヒットし、ビルボ−ドでナンバ−ワンを取ったのもペンタトニックの響きが、日本人には懐かしく、アメリカの人達にはエキゾチックに聞こえたからかもしれません。
話が少々横道にそれてしまいましたので元に戻しましょう。
この作品は現代に生きる5人の作曲家ピアニストが、約300年の歴史をもつ代表的西洋楽器「ピアノ」により1000年の都「京都」のイメ−ジを日本音階を使ってスケッチしたものです。ピアノという楽器にどんなドラマを演じさせるのでしょうか。四季折々それぞれの顔を見せる京都、皆さんもこのアルバムをいにしえの朱雀大路を散策するような気持ちで味わってください。
本アルバムにおいてもこの五音音階を主体としてメロディ−が組み立てられています。青銅製鍵板楽器の瑞々しい音色と竹の持つやわらかな響きがより一層エスニックなメロディ−を引き立たせています。